耐震診断の結果

■耐震診断の結果は、2010年3月25日の米子市議会終了後の全員協議会にて明らかになりました。耐震性があるかどうかの指標であるIs値が、大ホール棟0.15 楽屋棟0.18 管理棟0.70という厳しいものです。

この結果を受け、同年4月5日には、「大地震時に倒壊の危険ありとして月末日をもって使用を停止する」ことが決定されました。

少し専門的ですが診断値が低い結果になった要因として以下のように報告されています:

  1. 構造計画的に屋根鉄骨梁と柱の接合部が剛接合であると推定されるが、実際の設計図によると剛接合が期待できず、柱の水平耐力の評価が低くなる。
  2. 屋根梁と屋根モルタルスラブの接合が確認できないため屋根面全体の剛性が確保できていない。また同じ理由で梁自身の鉛直方向の耐力も不足ということとなる。
  3. X方向に壁がすくないので、耐震要素は柱の水平耐力しか期待できず、1.2.の内容から建物の保有水平耐力は低いものとなっている。
  4. 舞台上部の増築部分の壁が、既存部分との接合方法の問題で耐力壁としての評価ができない。

■また結果を受けての耐震補強の計画案が同時に提案されています。屋根の葺き替え、耐力壁の新設、楽屋棟の改築などの内容で、7億8千万の改修費、1年半の工期と試算しています。

尚、管理棟についてはIs値が0.6を上回っているので耐震補強の必要なしとの診断です。

耐震診断結果の問題点

■今回の耐震診断は(財)日本建築防災協会 既存鉄骨鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準に定められた診断法、2次診断(一部3次診断)で行われました。

3階〜4階建てくらいまでの学校建築などにこの診断法を適用することは問題ないにしても、米子市公会堂のようなホール建築物や複雑な形態の建築物への適用は疑問があり、算定結果が実情を正確に表しているか判断が困難です。 「使用停止」による影響や今後のまちづくりの重要な要素である米子市公会堂のような建築物では、より信頼性の高い動的解析法でさらにチェックすることがベターではないかとの専門家の意見もあります。 また、2000年に「鳥取県西部地震」(※1)にて被震していますが、西部地震で軽微な被害にとどまった事実は、今回のIs値ではうまく説明できないのではないでしょうか。 ここでも算定結果と実情とのズレを感じざるを得ません。

※1:鳥取県西部地震での米子市内の地震データ/(1)米子市博労町 地震加速度285gal 計測震度5.1(震度5強)/(2)米子市東町 地震加速度380gal 計測震度5.8(震度6弱)

■さらに、提案された補強計画案は米子市公会堂の文化的価値の観点からは問題があります。 価値を維持するためには、補強計画案、施工方法ともにコンペで優れた案を募る、プロポーザル方式で優れたエンジニアを選定の上計画案を練るなど、従来の入札による業者選定によらないプロセスが必要と思われます。 今後の詳細調査や、コンペ等の開催により改修費用も減額可能性もありますので、行政、議会ともよく議論していただき、より良い方法を模索いただきたいと考えています。